月光キャラ / 二つ名柘榴キャラ / 称号 / 新字夜明けの守り手たちうしろのひと / みんなの20Q
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彼はスラムによくいる薄汚れた子供だった。ただ目端がよくきいたので、スラムに住み着いた老医師の手伝いを頼まれることもよくあった。 ある日そこに、目立たないよう装飾を施した女性用の馬車が横付けされる。下りてきたのは名医と呼び声高い老医師を最後の頼みとしてやってきた貴族の令嬢とお付きの乳母だった。 一目惚れだった。彼女も心を開いてくれた。 しかし彼女が治療に寄越されたのは、傾きかけた家のため金のある貴族へ嫁がせるためだと当人の口から聞かされる。娘を道具としか考えない両親は、スラムを嫌って本人は足を向けもしないとも。 そのうちに彼女の体調は落ち着き、スラムへ馬車がやってくることもなくなった。 彼の才覚に運が味方し、財産を作るのは難しいことではなかった。 下っ端の頃は汚いことにも手を染めたが、彼女の両親に援助と結婚を申し込む頃にはすっぱり整理しておいた。 両親が金の匂いにとびついたのは目を見ればわかったが、それでも地位を鼻に掛けこちらを見下げる態度を取ろうとするのには笑わされた。 披露宴は花の季節だったが、せっかく身につけたマナーも、彼女の前では張りぼてと見破られる気がして、ご馳走には手を付けられなかった。 それは建てた屋敷に彼女を迎えてからも続いた。 持ち直したかのように見えた彼女の体調が再び崩れたのはそれから時も経たないうちだ。 彼は老医師の弟子をはじめ、あらゆる手段と財産を尽くして彼女を救おうとしたが、なかなか成果は上がらない。 そんなとき、彼自身も信者であり、結婚式でも世話になったサカロス神殿から、とある吟遊詩人を紹介された。 冒険者でもあったその詩人を妻の無聊を慰めるために呼び寄せ、ほどなく、妻とその男が屋敷を出奔したことを知らされる。 やはり彼女も自分のことを内心馬鹿にしていたのか。彼女の両親の言う通りだった。 しかしそれならば自分より劣った男を相手に選ばなくてもよいだろうに。あてつけか。 事業に全精力を傾けていた彼の元に一年後戻ってきたのは、間男と定めていたその詩人だった。 門前払いしようとも思ったが、立場を思い知らせるために迎えると、彼が持ち帰ったのは妻であった女性の形見の品。 自分が汚名を被ることを覚悟しながらも、自分を愛していない女性を連れ去って最期を看取っていたのだ。 一度でいいからあなたと食事を共にしたかった。 子供の頃から、すべてわかっていたと思っていた彼女の心を、彼女を殺してしまったのは自分自身だった。 彼女を手に入れるために築いた財産、ひいては、自分自身がとても厭わしく罪深いものに思えた。 やがて彼は、彼女の家と両親を維持するための金銭を残してすべての財産を処分し、酒場で働き出した。 同じ食卓を囲むことの大切さをサカロスは説く。 その声を聞き、彼は彼女の旅を代わりに引き継ぐことにした。 彼の用いる聖印は、婚儀の時、妻から贈られたものだった。
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